アルパカの右にならえ

邦画と小説をこよなく愛する創作ヲタク。

【邦画ログ】彼らが本気で編むときは、/「ビール発明した人にノーベル賞あげたい」飯島奈美さんのご飯が食べたい

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生田斗真がすごかった。小皿への小指の添え方に生田斗真トランスジェンダーへの本気度を見る。
登場からいきなりの、コンビニおにぎりを一人、ダイニングテーブルに座って食べる主人公の背中だけでほぼほぼの背景を知り得てしまえるからすごい。また、この最初のパートで母親がミムラだって気がつかなかったよ。
小学5年生の時ってこんなんだったっけ……、と、自身の小学生時代を思い返しました。「こいつんち母子家庭だからよー!」ってからかってくるイジワルな男子に対して、「うるさいチビ」「黙れデブ」「ダッサ」と言い返す女子のお友達グループの感じが小学生っぽかった。そのお友達も、主人公のトモが本格的にからかわれるようになると距離を取っちゃうところもリアルというか。トモが橋の欄干に立って、川に向かって唾を垂らすシーンが好きです。唾を吐くんじゃなくてあくまで垂らす行為というのが、あーやったことあるある(笑)ってなった。
いえ、とか、はぁ、って中途半端にタメ口でなく、丁寧な言葉で相手と距離をつけるための相槌を打つ感じが、小学生中年くらいの子供と大人の狭間という感じ。生田斗真演じるリンコが働く介護施設の同僚、門脇麦ちゃんの存在感はさすが! 大好き。入居者のおじいさんに対しても粗雑な言葉で相手をするキャラクターも素敵。

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「前までは本と机しかなかった」というマキオの台詞から、リンコと共同生活をするようになってから増えたと思われる家具。このインテリアもすっごく素敵だった。


ある程度トランスジェンダーに理解のある人間関係が出来上がっているところに、今回トモがぽんと入ってきた感じが、映画を観ている側の気持ちと重なって良かったかも。それだけに、悪意を持った書き方がヘンに浮いちゃった感じがした。リンコが入院した時の看護師の理解があまりになさ過ぎて笑ってしまった。今時あそこまで偉そうな態度の看護師さんいなさそう。でもそこはとげとげしい気持ちにさせるのが目的だもんね。小池栄子のイヤなママ役はほんっとうにハマるよね……。沢尻エリカの息子を誘拐した時のクソみたいなママ役も最高だった記憶がある(ドラマの話)。

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トモ、リンコ、マキオの三人で初めて食卓を囲んだ時の夕食メニュー。ドラマ「カルテット」でも議論の種となった唐揚げに添えられるレモンがここにも……! この、海老とブロッコリーのニンニク炒めみたいなのが死ぬほど美味しそう。


リンコの母のキャラクターが最高。「例え子供だとしてもリンコを傷つける人は私が許さない」とトモに言い放つシーンとか、マキオの父親がもうなくなってて、母親も施設にいる状況を「でもやっぱりちょっとラッキーみたいな?」「だって私自分の子供が一番可愛いんだもーん」ってあっけらかんと笑うところとか、リンコがまだ普通の中学男子として悩んでいた頃、そうとう葛藤があったんだろうなぁと思える。この母に何度もリンコが助けられてきたんだなぁと想像できた。108個の煩悩チンコ(ネーミング…)の数数えてるとこ楽し過ぎ。「チンコの裏までちゃんと洗った?」「洗いましたよ、表も裏もごしごしと」「ちょっと誰この左曲がり、マキオ?」「それは太すぎだろ!」とか、小学生女子トモの前でまあまあな下ネタ喋ってふざけているところが好きです。
同じトランスジェンダーの悩みを持っているかもしれない、友達カイくんの未来がど絶望過ぎて可哀想だなぁ。「普通じゃない」と友達と会話することすら禁止する小池栄子ママだし、それを苦にオーバードーズまでしちゃうし、その行為を「罪深い」とまで言われ、絶望&絶&望だよほんと。カイくんが幸せに成長できることを願おう。

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リンコがトモのために用意してくれた朝ごはん。黄色い卵焼きが美味しそう。お皿のラップをめくって、卵焼きを手で掴んで食べながら歩くトモの仕草も好きだった。卵焼きにマカロニサラダにほうれん草のおひたしにご飯とお汁…最高の朝ごはん!


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トモが「こんな可愛いお弁当初めてだったからもったいなくて食べられなかった」と、タイミングを逃して痛んでしまったお弁当を食べて、結局お腹壊しちゃう展開がかわいかった。「可愛くて可愛くて仕方がない」と言うリンコの気持ちを考えて泣いた。タコさんウインナーを空に掲げて微笑むトモも素敵。


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三人がでっかいサングラスをかけて海辺で編み物するシーン。ここにも瓶ビールが。男から女に変わる手術で、切ったチンコはどうなるのか、という純粋な質問をするトモ。その衝撃の答えにショックを受けた顔とセリフも可愛かった。


戸籍を変え、マキオときちんと夫婦として結婚して、トモを養子として迎えられないかと話す二人のシーンがよかった。立ち上がって抱き締める仕草も、さりげないキスシーンも、最初の方こそ違和感があったものの、もうこの辺まで来ると生田斗真がただの女性にしか見えなくなっているから、自然と受け入れてしまう。役者ってすごいんだな……と絶句してしまった。ミムラ母がクソ中のクソ中のクズ女だった。良い人とか報われない役が多かったからこういう人に迷惑しかかけないクズ役とミムラも良いよね。人間として誰よりも下等生物役のミムラ母は最高だった。結局、トモは母親を捨てる程大人ではなかったけれど、「今日は一人で帰って」と母親に言い放つトモの精神的強さには涙が出た……。誰だって誰かに頭を撫でてもらいたいし抱き締められたいよねー。

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赤ウインナーでできたこいのぼり! 早朝、マンションのベランダから見えるこいのぼりを見つめるリンコのシーンもあった。


アイテムとかひとつひとつのシーンに印象的なものが多かった。いろんな場面で出てくる、リンコとマキオが好んで飲む瓶ビール。糸電話での仲直り。夕方のラムネサイダーの瓶の中のビー玉。赤ウインナーでできたこいのぼり。フードスタイリストの飯島奈美さんが監修しているだけあって、食べ物のシーンはみんな美味しそうで本当にお腹が空いた……。おかずの並んだ食卓やお弁当の蓋を開けた時のトモの明るくなる表情がすごく可愛かった。しじみの醤油漬けと切り干し大根とイカの塩辛はきっと、お母さんと一緒に食べた記憶があるんだよね。
自宅に帰って行ったトモが忘れて置いていったハンカチを握り締めて泣くリンコがせつなかったし、彼女を後ろからきつく抱き締めるマキオもよかった。もうすでにリンコが女性にしか見えてない。初登場時の違和感はすでにない。最後、トモが戻った家が綺麗に片付けられていて、母とトモの生活が少しでも前向きに変わることを示唆していてほっとした。マフラーと見せかけてのおっぱい。静かなエンドロールが印象的だった。

【邦画ログ】美しい星/私は処女のまま妊娠したの

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SFらしい。違和感を受け入れるまでにしばし時間がかかったけれど、登場人物一家たちが自身が金星人、水星人だと覚醒(?)する辺りから、具体的に言うと40分超えた辺りからなにこれ?! って引き込まれてく感じ。橋本愛ちゃんの絶対的存在感圧倒的美貌に、ハァ…! ってなる。こういう作品に出演する亀梨くんが羨ましい、いいなぁって思う。役者としての亀梨くんがとても好きです。リリーフランキーのおかげで、天気予報図の前で指し棒を振るう気象予報士を見るとそわそわしてしまう。

タイトルバックが素晴らしい。遅れて来た亀梨くんが席に着いた途端落ちる照明、お誕生日のケーキを持って登場するレストランのボーイ、外国語でハッピーバースデーを大声で歌われうんざりする表情の亀梨くんと、その状況に無の状態の家族、そして父親のリリーフランキーは不在……、そこでタイトル「美しい星」
監督からもっとがっついて欲しい、とオーダーされたらしいリリーフランキーのベッドシーンがエロかったです。最高。

美しい星 Blu-ray豪華版(2枚組)

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美しい星 (新潮文庫)

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美しい星 通常版 [DVD]

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お金が無ーい

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年末年始の年賀状仕分けの深夜勤アルバイトを経て朝型人間になりつつある。睡眠時間をたくさんとっているせいか、ここにきてお肌の調子がバツグンにいい。目の下のクマがようやく取れてきた。頬っぺたのすべすべ具合が赤ちゃんのあれ。ちなみにお尻のすべすべ具合も調子がいい。睡眠は美肌の一番の秘訣と言うけど、尻の肌にも効くとは。祖母、父、おば、兄にまでお年玉を貰う。親戚中の恥さらしである。こんな私に誰がした……。友達からのごはんの誘いLINEを既読にすらしていない。今日は春みたいに暖かい日だ。

焼き肉も食べたいしパスタも食べたいなぁ…天ぷらも…

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死にたいという強い想いよりも、「今死んでもまあ別にいいかなぁ…」ってゆるい考えが一番死に近いって内容をツイッターで見て、無気力ってやばいなって思った。幸せになりたいとは思うけど今割りと幸せでそれでもまあいいかって感じなんだよね。将来性はないけど。二億円欲しい。

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ご飯って美味しいよね…幸せだと思う。

【邦画ログ】サバイバルファミリー/「必需品。カツラ、自転車、つけまつげ」ネタバレあり感想

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「サバイバルファミリー」
この映画は、「ある日突然、日本から電気が消えた──。」から始まり、「なぜ?」ではなく、「理由は知らん、だが生きる! じゃあそしたらどうする? とりあえず飲み水と食糧確保して、安全だと思う場所に家族全員でゴー!」というお話である。

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(「こんな時につけまつげいるか?!」と怒られ、キレて無言で父のヅラを指差す娘。「おめーのカツラはどうなんだよ!?」と、口には出さない優しさに泣いた)

「そんなことも分かんないのか!」「なに考えてんだよ!」が口癖の、口だけは達者で偉そうで頼りにならないたるんだ身体のダメ親父を演じるのが小日向文代さん。魚一匹丸ごとなんてさばけない、美人だけど天然ボケのちょっと抜けた母親を演じるのは深津絵里さん。つけまつげバッサバサで父に面と向かって「ウザッ」と言ってのける、クラスの友達グループにはさほど友情を感じず、夜な夜な繰り広げられるライン合戦はひたすらウザい、思いきり今どきの女子高生を演じるのが葵わかなさん。常にヘッドホンをつけて無口、大学でもそれほどはっちゃけてない、講義の板書をスマホ写真で済ます、こちらもTHE・今どきの男子大学生を演じるのが泉澤祐希くん。

電車が止まっていたとしても徒歩で、停電のせいで会社の入り口のセキュリティーが停止してもガラスを突き破ってまで会社に行こうとする父。もうほんと、とりあえず会社行かなくちゃっていう、日本人の社畜精神がずばずばに描かれててほんと笑う。でももし、自分がこの状況に陥ってもまず会社に行くかもしれないって思ったよ。この時の父の感じから、経理部の上の方の役職なのかなぁと想像する。態度だけは偉そうな中途半端な役職止まりというイメージ、私が過去に働いてた会社でもいたいた……と、ここで少しイヤな気持ちが蘇る。
食料が心配でとりあえずスーパーに買い物に行く母。スマホの電池がゼロになっても友達の顔を見るために学校へ行く娘と息子。

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(まさかあの鈴木家族が一致団結して豚を捕まえるとは)

全ての電気を使用するもの電子機器がストップという状況から、クレジットカードが使えない、ATMで現金が下ろせない、スーパーに物資が届かない、車が使えない、等々。東日本大震災の時も、帰宅難民の人たちがこぞって自転車を買って帰路についたというニュースも記憶に新しい。「羽田までどうやって行くの?」という娘に「自転車だ! 環八を真っ直ぐだ!」って叫ぶ父に笑った。水を高値で売る商店、物々交換で米を渡す米屋、一番すごい、と驚いたのは、2キロある真っ暗なトンネルの中を先導することで食料(お金?)を稼ぐ盲目の老人たちのシーン一家は「トンネルでしょ? まっすぐじゃん」と真っ暗なトンネル内に自転車で進もうとするが、中で自動車が停車していたり、地面でタヌキが死んでいたり、ただまっすぐ進むだけでは出口まで辿り着けない。その点、目の見えない方たちは日々白杖を頼りにまっすぐでない道を進んでいる、暗闇のプロに先導してもらえればトンネル内も安心。というシーン。こんなエピソードが思いつくこと、あります? すごいな。

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(見よ、この生存レベルの高そうなスーパー家族を)

災害時に大事なのはカツラでもつけまつげでもスマホでもなく自転車なんだなと強く実感しました。
ほぼオールロケらしいこの映画、東名高速を貸し切って自転車で突っ切るシーンは本当に爽快です。また、そこで出会う時任三郎率いる「災害があっても自活力の高い、むしろこの状況を楽しむスーパー家族」との対比も良かった。
一番面白かったのは須磨水族館の炊き出しのシーン。外で魚などの魚介類を焼いて食べてる集まりを発見して、え、なんで? と思っていたら、水族館の水槽で泳いでいる魚をとっ捕まえてガンガンに食ってる。蟹とか海老とか味噌汁にしてんの。こんなん声出して笑うしかない。並んでもギリギリ料理が足りずに終わってしまい、「せめてこの子たちの分だけでも!」って土下座する父と、泣く父を抱き起こして支える家族のシーンにグッときました。

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(目玉焼きと豚の燻製肉が美味しそう)

また、岡山で豚を追いかけ回すシーンも最高。豚と一緒に土手から転がり落ちて死んだかと思いきや、豚を仕留めて得意気な父の顔…お父さん……。養豚場の家にお世話になって、きゅうりの漬物と目玉焼きをおかずに白ご飯を掻き込む演技が凄かった。役者さんって本当にすごいんだなって圧倒されました。泣きながらご飯を食べる娘の表情も素敵。ここ泣いた。

川を渡るシーンが11月に撮影されたと聞いて絶句。見てるだけでも息苦しくなりそうなくらい過酷なシーンが冬に撮影されたなんて、なんという地獄…コヒさんしんじゃう…!! 川に流された父を追うも見つからず、岸で待つ母と娘に、外れたカツラの毛を差し出す息子。父の唯一の形見。それを見て泣き崩れる親子の図が可笑しすぎてつらかったです。マンションの隣の家族が泣く泣く飼い犬を置いて家を出るシーンからの、道中見かけたどこかから逃げてきた飼い犬に情けを見せる娘がよかった。ペットボトルの水を盗まれ追いかけるも、追いかけた先で犯人がその水で妻と共に乳児にミルクを飲ませていることを知ると、なにも言わず戻る息子もよかった。蒸気機関車の拾われる直前、母と娘の手を取って前を進む息子を見て「大きくなったな……」と感動。

【邦画ログ】PとJK/「可愛いと多幸感で1000万点あげる」/ネタバレあり感想

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PとJK

亀梨和也KAT-TUN)演じる警察官の巧太と、土屋太鳳ちゃん演じる女子高生歌子のお話。長回しカットを撮らせるならこの人! な廣木隆一監督の作品。「オオカミ少女と黒王子」でもべったべたのべた褒めしてたため、今回も絶対絶対好きな映画になるんだろうなと思っていたら、想像以上に大好きになっちゃった作品です。
過去の感想はこちら。
ayappu900.hatenablog.com


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冒頭、路面電車に乗るまでの坂道を歌子がダッシュしてる長回しシーンの時点で既に好き。22歳のフリして合コンに出席するも、男の人に強いお酒を飲まされそうになっちゃって困ってるところに、さっそく亀梨くんが颯爽と登場。「飲めないならもらうよ」ってテキーラ? を並々注がれたショットグラスを奪ってグビグビ飲み干す亀梨くん…かっこよすぎでしょ。登場2秒で心奪うってなにごと??
女の子が飲酒強要されて困ってたらそのお酒をスマートに飲んじゃうのが亀梨くん。終電間に合わない! って女の子が困ってたら、終電間に合うように一緒にめちゃくちゃダッシュしてくれるのが亀梨くん! もう好き!
 結局終電に間に合わなくて、繋いだ手を離すときごめんねって言わないのがかっこいい。ここで下手な映画とかだと「あの、手……」「あ、ああ」わざとらしくパッと離して「ごめんっ」とかじゃん? 違うんだよ、土屋太鳳ちゃんが繋いだ手を見下ろす。亀梨くんがその視線に気がついて、そっと手の力を緩める、からの「少し歩こっか」なんだよ。分かってらっしゃる…!!
16歳って判明した途端手のひら返す亀梨くんも良い。「酒飲んでねえだろうな? このクソガキ」とすごまれてビビって「ごめんなさーーーい!」って踵返してダッシュしちゃう土屋太鳳ちゃんの可愛さも良い。そのあと追いかけてきてくれるの超かっこいいしなんかもう亀梨くんの全てがかっこいい。もうこれ、亀梨くんのこと好きになるし土屋太鳳ちゃんのことも好きになるしで、この映画最後まで心が持つのか? って感じです。開始15分程度でこれです

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映画冒頭、路面電車に乗るために坂の下からダッシュする土屋太鳳ちゃんを、遠くから映してるカットからすでに長回し。朝友達に会うまでの廊下から教室までの道のりとか、学校を出てから家までの帰り道を自転車で走る時の息遣いとか、やっぱりこの監督の長回しが好き。重要なセリフや心が動くシーンは、普通なら登場人物の顔をアップに映すんだろうけど、この人の映画は景色さえ演技のうちだと言うように、きちんと背景の中に生きているキャラクターを撮るので、すっごく大好きです。函館の澄んだ空気や美しい海の景色、家の中での家族の立ち位置など、ただ演技している表情をアップで映すだけでは伝わらない表現の仕方もあるんだなと実感する。

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土屋太鳳ちゃんが「結婚結婚~!」ってウキウキしながらベッドでブリッジしてるところが好き。可愛い。そんな土屋太鳳ちゃんのお部屋の扉から顔を出して、「ケーキ食べよっか」って誘いにくる、ともさかりえ演じるお母さんもすっごく素敵。
土屋太鳳ちゃん演じる歌子の両親は、どちらかというとお父さんが常識的にちゃんと怒ったりする心配性で、お母さんは割りと物静かに状況を眺め、きちんと諭したり気持ちを汲んでくれる存在、という感じです。物語の中盤この二人の、夫の口についたお米粒をとってあげるっていうなんてことはないシーン。ここ、娘を心配する夫を心配する妻、っていうやり取りを台詞なしでああやって表現してるのがすごいなぁと思いました。
付き合って初デートの初プレゼントが防犯ブザーとか、亀梨くんの職場の先輩の「卒業まで待てないワケ?」という正論(笑)とか、付き合って一年後くらいの展開を開始30分でプロポーズまでやっちゃうとことか、お父さんから亀梨くんへの「一発殴らせろ」パンチが超弱々しいところ(笑)とか、結婚するってことを知った土屋太鳳ちゃんのお友達、玉城ティナちゃんの「26歳かぁ~やっらしいなぁ~ドンッ」とか、エピソードやシーンがいちいち印象的で可愛い!

お父さんと亀梨くんとの会話の中で、「娘が不幸になるのなら君をいつでも殺せる」というセリフが出てきたのがかっこよかった。娘さんをください! と言ってきた男に対するパンチは弱くても、言葉として覚悟を見せる父の強さにぐっときました。亀梨くんのお家にいて、「先に風呂入ってくるわ」と脱衣所に向かった彼の背中を見送った後、「お風呂ってことは……ハァッ……! ついにわたし…!!」ってどきどきそわそわしちゃう土屋太鳳ちゃんめちゃくちゃ可愛くなかった? そのあと見事にスルーされるところまで通しで可愛い。

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あと、不良少年演じる高杉真宙くんの顔面偏差値の高さにおののきました。顔と同じくらい心も傷ついて、金色に染まった髪を握り締めるシーンとか美しすぎてため息が出た。なんていうか、俳優になるために生まれてきたんだなって思う。それくらいの美しさと儚さだった。

喧嘩しちゃった時、すねて背中を向ける歌子に「どっちかが砂糖でどっちかが塩」って言って巧太がコーヒーカップを差し出してくる。片方を一口飲んでから「ごめんね、言いすぎた」って謝る歌子とのシーンがすっごく可愛い。お互い素直に謝ってから「そっちが塩でしょ」って笑う歌子に向かって、しょうがねぇなぁまったく、みたいな呆れた顔して「両方砂糖だよ」って笑う巧太のイケメン度がずば抜け過ぎてて、普通ならこういうシーン(なーーーーにいちゃついてやがる! このバカップルめが! オラ!)って思うんだけど、まんまと(最そして高)になるわけですよ。なに言ってるか分かんないと思うけど本当になにが起こってるか分からないくらい亀梨くんと土屋太鳳ちゃんの醸し出す可愛いカップルの空気に死にそうになるんだよ。

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(なんという可愛らしいの権化)
あと、この映画の一番素晴らしいシーンは文化祭の演出だと思うんだけど、歌子のクラスの出し物貸衣装屋さんに遊びに来た巧太が、学ランコスプレをするんです。この姿があまりにも「ごくせん」で、これは確実に亀梨くんファンへのサービスショットだと思うんですけど、この学ラン姿の亀梨くんだけで亀担は死んだんじゃないかな。
そしてね、肝心の土屋太鳳ちゃんの格好が緑の全身タイツのカッパなんだよ、河童。河童だよ、お皿が乾いたら元気がなくなっちゃう河童。黄色いくちばしつけた河童だよ。どんだけキュートなんだよ。河童と学ラン姿で校内デートってどれだけキュート&キュートだったら気が済むわけ? って問いただしたいよね。
「学生服姿の巧太くんと校内デートしたい!」って夢見る土屋太鳳ちゃんの願いをしぶしぶながらも叶えてくれるところが素敵。階段を降りつつ手を繋ぐ瞬間があるんだけど、普通ここは真正面から撮りたいのでは? と思うようなこのシーンでも、階段の柵越しに俯瞰から撮ってるから、土屋太鳳ちゃんの「手繋ご」ってニコッておどけて手差し出してる表情しか見えないの、そこがすごくいい。きっと呆れた顔しながらもにやけちゃってる巧太の表情を想像できて、すっごく良いんです!

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かの有名な(?)くちばしでチュッ、てしてからの、くちばし外してキスシーンがくると思いきや生徒に邪魔されて寸止め! ってシーンも、心のダメージ問答無用で致死量越えって感じでやばい。巧太の制服シャツに抱き着いてにまにましている歌子を見つけ、「中身ないのに抱きついても意味ないだろ」って、そのシャツを身に着けて、「ほら来い」って両手を広げるシーンも、とにかくステキの一言。なんかもう、この監督が五十歳を超えた方とは到底思えない、女子高生なのでは? 恋する女子なのでは? って錯覚しちゃうんだよ。

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また、体育館で吹奏楽部の生徒が演奏しているシーン、ここがもう、文句の一つもない、息が止まるくらいグッと心を掴まれたシーン。体育館に続く廊下から、体育館の中まで入って、演奏してる前の方まで巧太と歌子が手を繋いで行くカット。ここ、二人が体育館に入ってからもカメラが途切れずに、ステージ四段くらいになってるブラスバンドの演奏者の一番上の端の子までちゃんと映すようにカメラが行くんですよね。
また、中段にいる打楽器の木琴? 鉄琴? の生徒が、両手に持ったマレットをくるくる回してステップ踏むような振り付けがあって、そこも可愛くて見逃せない。あとあと、演奏曲がUNISON SQUARE GARDENの楽曲「シュガーソングとビターステップなのも、大好きな曲なのでテンションが上がりました。演奏中、大きなバルーンが宙にポンポン跳ねていて、すっごく幸せで楽しい空間が広がってるのもじーっと見入っちゃう。このシーンってきっと、ブラスバンドの演奏者以外、エキストラの方たちはそれなりにアドリプで手拍子したり、バルーンをトスしたり楽しんでると思うんだけど、そういう「楽しんでる」表情だったり、吹奏楽部の演奏を大写しにせず、ただそこにある空間を引きの画で魅せているところが、この監督の大好きなところだな~! ってまた改めて好きになっちゃいました。

こういう学園ドラマ作品の中に出てくる文化祭って、普通なら舞台装置の背景としてのシーンであることが多いと思うんだけど、この文化祭にはちゃんと「平和への祈り」(うろ覚えだから間違ってるかも)というテーマがあることが素晴らしいなと思いました。後夜祭で参加者たちが灯籠の中にろうそくを灯し、気球にして空に浮かべる灯籠飛ばしを行うシーンがあり、それもすごく印象に残りました。
巧太が歌子を守るために負傷してしまった時、病院の屋上で一人落ち込む歌子の元にやってきたティナちゃんと西畑大悟くんと一緒に、この灯籠飛ばしをするシーンも好きです。飛ばす瞬間、ティナちゃんに「願い事は?」と聞かれ、なにも言わず空に上っていく灯籠をただじっと見つめる歌子の表情が心に残った。ここで願い事を口に出さないところが良いんだよね。

君が無事なら良かったって頬っぺたに伸ばした巧太の手を振り払うような歌子の仕草にもグッときた…。
「私のために死んでもいいなんてやめてよ」という歌子に、それでも巧太は「これが俺の仕事だから」と答え、ついには「命かけてとかそういうの無理、重い」って弱音をこぼしちゃう歌子の幼稚な部分もすごく良かった~、もう好き……好き。
「どんな人間にもなれるよ」という巧太のセリフや、「私は馬鹿な女子高生で大神さんはただの不良」という歌子のセリフと対になったような「親父は優秀な警察官で俺は馬鹿な息子」って巧太のセリフも好きです。

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君のためなら死ねる」って警察官としての巧太の気持ちが、「一緒に生きていってください」に変わった最後のシーンも素敵だった…、むしろもう私だって土屋太鳳ちゃんと結婚したいよ、いっそ。そういう気持ちよ。
そしてキス未遂二回目も良い。エンドロールへ向かうクライマックスのシーン、講堂を二人で手を繋いで出てきてからの廊下のカットで「これはまさか、フラッシュモブシーンくるか…!?」ってゴクリと期待してたらそのまさかですよ。学園モノにおける「最後に全員で踊るミュージカル演出」にめっぽう弱い私は、最後の最後にまた致死量のダメージをくらいました。
極めつけのこのパレードのBGMがブルーノ・マーズの「Marry You」はい拍手~! 全員起立の上「シェフを呼べ」顔しながらの拍手~~!! ですよ、もう。ええ。Youtubeのかの有名な(?)フラッシュモブプロポーズの動画で胸打たれた私、撃沈。またここのシーン、巧太と歌子のあとを楽しそうに歌いながらついてくる生徒の子たちが良かった。安直過ぎたらきっと踊り出してたかもしれない。
そしてプロポーズをした観覧車内でキスをして、結婚指輪をはめ直してからのまた見つめ合ってキスをして、からのタイトル「PとJK」。はい拍手~~~!!! ここにくるまでタイトルバックが出ていなかったことにも、それに一切気がつかず映画を観ていた迂闊な自分にも、それを見越してタイトルを最後に持ってきた監督にも、すべてにおいて一本取られた~~! 好き~~~~!!! なのである。

やるせないのはつらい、だけど面白い

友達とおすすめの漫画や映画の話をしてたんですけど、彼女が「大人になってからは、やるせない想いや後味の悪い想いをするようなストーリーが辛すぎて、自発的にあまり読まなくなった。現実を知った分だけ、フィクションの世界では限りなくハッピーでいたいし底抜けに幸せを感じたいし悪い人が誰もいないと良い」って力説してて、ほんと(分かる)って頷いた…。
いわゆるバッドエンドとか救いのないストーリーって昔の方が好きだった気がする。この友達に洋画「ミスト」か「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を観せたらしぬかもしれない。私は家族で「ミリオンダラー・ベイビー」を観て、鑑賞後ものすごく重い空気になったことがあります。

これだけじゃあれなんで胸くそ悪かったりせつないしやるせないけど好きな漫画を紹介します。

ボーイズ・オン・ザ・ラン花沢健吾

なにも言わずに一巻から読み始めて欲しい。まずちはるちゃんを好きになってから、話はそれから。


兎が二匹 1巻 (バンチコミックス)

兎が二匹 1巻 (バンチコミックス)

兎が二匹 2巻(完) (バンチコミックス)

兎が二匹 2巻(完) (バンチコミックス)

兎が二匹/山うた

キーワードは「不老不死」
「ご飯がないだけで 焼かれただけで 歳とっただけで
明日があると思ってる間にみんな一瞬で死ぬくせに!!」
ってセリフがつらい。


夏雪ランデブー (1) (FEEL COMICS)

夏雪ランデブー (1) (FEEL COMICS)

夏雪ランデブー河内遙

この漫画のヒロインには死別した元恋人がいて、その元恋人が主人公(男)の身体を借りてヒロインとデートしたり会話する展開がせつない。
好きなセリフはその死んだ男の人の
「たとえば僕が この流れで 君に何かを諭されているんだとして
多分うまく納得できたら それで全て丸くおさまるんだ
わかってるんだ いちおう ちゃんと これ以上 いちゃいけないって」

です。つらい。


ミリオンダラー・ベイビー [DVD]

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ミスト DVD

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ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]

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