アルパカの右にならえ

生ビールでも発泡酒でも幸せなアラサー。邦画と小説をこよなく愛する創作ヲタク。

【邦画ログ】「湯を沸かすほどの熱い愛」ネタバレ感想/しゃぶしゃぶ食べたい

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「湯を沸かすほどの熱い愛」めちゃくちゃに大事な結末のネタバレまで書いてあるので気をつけてね。


この映画は、「ああ宮沢りえが余命宣告されて、家族の尻叩いてなんやらかんやら事件があって最後は『ありがとう…!』って終わるタイプのお涙ちょうだい系か…」と思って観ると、中盤「簡単なお涙ちょうだいじゃないよ…素晴らしい人間ドラマだ……グス……」と心変わりして、最後のエンドロール直前で「!!!!!???」と後ろにひっくり返る系の映画です。結論から言うとすっごい良い。好き。嫌いな部分も含めて好き。とか長年付き合った彼氏べた褒めするみたいな安直な感想出ちゃう。

いろいろなエピソードとか、小道具の使い方とか、伏線のはり方とか、登場人物のキャラクターの作り方とか、とにかく細部まで自然なのにとても魅力的で素敵。関西弁の子連れ探偵とか、ヒッチハイクを繰り返す松坂桃李くんもすごく良い! 50くらいの女トラック運転手にラブホに連れ込まれて覚悟するも靴脱いで靴下脱いだタイミングで逃げ出したエピソードは最高。そして拾ったサンダル履いて裸足で生活してるのも最高。宮沢りえに抱き締められ、戸惑って手の置き場所が分からない演技が好きです。
序盤、苛められてる杉咲花演じる安澄がいじめっ子に絵の具で制服を汚されてしまって、宮沢りえ演じる双葉はそれを見てショックを受けるも、娘が頑なに「自分で汚した! 数えたら絵具12色あったよ」っつってロックなことを言うので、その心意気を汲んで「その中で一番好きな色は?」とか聞いちゃう。水色、って答える娘に「お母ちゃんは断然!」って答える宮沢りえ。この「赤」がまさかラストの赤に繋がろうとは思わないでしょ……。レンタカーの赤、お見舞いに貰う花の赤、そしてラスト銭湯の煙突からのぼる煙の赤。

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序盤のいじめっ子エピソードについては、いじめっ子側の女子たちの絶妙なブス加減(決してめちゃくちゃブスではない、ふっつうの顔面だけど性格がクズなのでブスに見えちゃう)が最高。いじめ描写に関しては、母から娘に対しての「にげるな! 立ち向かえ!」という一貫した態度は私は好きじゃない。立ち向かうことが正義、正解とは思いません。逃げることはきちんとした自分を守る行為なので、それに関しては双葉というキャラクターの性格が合わなかったんだろうなというだけの感想です。
おもらししたパンツをドアノブに引っ掛けてくの笑った。「ちゃんと仕事するので、この家にいさせてください」という9歳の鮎子のセリフは、少し大人が言わせた感がすごいけどでも泣いちゃうよこんなの。あと、タカアシガニって食べたことないんだけどおいしいの? カニ食べたくなった、あとしゃぶしゃぶもめちゃくちゃ食べたくなる……でも私、しゃぶしゃぶは豚肉派なんだ…(知らん)

入院してる宮沢りえの病院の庭に全員でピラミッド作りに来てたシーンで吹き出してからすごい泣いた。泣けるシーンとふっと吹き出しちゃう笑いのシーンのバランスが絶妙で、その波がとても心地いいので飽きません。あんなに元気で肝っ玉お母ちゃんだった双葉の「死にたくない、生きたい」は反則過ぎる~!
あとオダギリジョーモテすぎ子供作り過ぎモテすぎ、という感想も。父親弱すぎ。マジで。緩和センターに入院してからも全然お見舞い行けなくて、子どもに「どうだった?」って様子聞くことでしか心配できない精神的に弱いずるい男の描写が良かったです。どんどん弱っていく人間を見るのは辛いものだから。いよいよもう残り少ないだろうなって場面で、呼吸もままならなくて、喋ることもできない、意思疎通は目線を動かすくらいしかできない宮沢りえのベッドに頬をくっつけて、父親のことや鮎子の近況をぽつりぽつりと話す安澄は、見ていて辛くなりました。宮沢りえが喋ろうとしても声にならない、やせ細った唇の隙間から漏れる吐息とか虚ろな表情を見て、我慢していたけれど耐えきれなくて顔を背けてしまう杉咲花ちゃんの演技が、すっごい。すっごいやばい。カラカラになるくらい泣きました。ひからびちゃう……!

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個人的に「余命数ヶ月だったらなにしてもいいんかい」という双葉に対するツッコみはたくさんあります。耳の聞こえないしゃべれない女性へのビンタシーンとか、エッ!? ってびっくりした。でもまあ娘を捨てた母親に対する叱咤だと思えばまあ。でもいきなり殴るのイケナイ! 危ない! 家に置き物投げて窓ガラス割るのイケナイ! 危ない! お玉の角の方で頭殴るのイケナイ! って言い出したらきりがない!(笑)
女性が娘を捨てて出ていくシーンが、鮎子が母親に捨てられた場面だと思わせておいて、実は双葉が昔母親に置いて行かれた記憶だった、っていうのも上手くてすごい。ミスリード大好き厨なんで大興奮でした。
ラスト、まさかの宮沢りえの遺体を焼いてその火でお湯を沸かして風呂に入る銭湯のシーンは、今までの涙が引っ込んで全力で「マジかよ!??」ってぶったまげた。そこであのタイトルバックとかズルすぎる。煙突から出てくる煙がいのも鳥肌。
これ直接的な描写はないにしろ、正直「冷たい熱帯魚」レベルのグロさで、とにかくもう笑っちゃいました。監督の過去作品一覧を見た時点で予測しておくべきだった!(笑)
正直、このストーリーの舞台が銭湯であることにどうしても意味を見いだせなかったんだけど、このラストシーンからのタイトルなんだな、と思うと大納得です。手話を使うシーンも素敵だったなぁ。

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