アルパカの右にならえ

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【邦画ログ】散歩する侵略者/東出昌大のシーンの存在感【ネタバレ感想】

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(ポスタービジュアルにもなっているこのシーン、映画観てからだと印象変わる)

散歩する侵略者
地球上に下り立った宇宙人が人間の概念を奪って集めて知恵をつけて人類を滅ぼそうとしちゃう映画(すごいざっくり)。
宇宙人に人格を乗っ取られた松田龍平くんの無気力感がすごくしっくりくる。奥さんの長澤まさみちゃんともこうなる前から夫婦仲は冷え切ってたみたいで、映画はいきなり険悪な感じから始まった。オープニングのタイトルバックがすごーく不穏でそれでいて派手で、今から非日常な映画が始まりますよ感満点でワクワクする。とりあえず宇宙人はいろんな人間の概念を奪っていくんだけど、その奪い方が「それもらうよ」と呟いて人差し指でおでこをツンとつつくという形式で、それをされた人間がみんな膝から力がガクッと抜けて「ハッ……、なにこれ……」ってなるのが面白い。概念を奪われた人間は人格に変化が生じるんだけど、例えば「家族」という概念を奪われた長澤まさみちゃんの妹役前田敦子ちゃんは、さっきまで「お姉ちゃんお姉ちゃん」って懐いてたのに、急に「私がどこに行こうとあなたには関係ないんじゃありませんかぁ?」って馬鹿にしたみたいに笑って手を振りはらう、みたいな感じ。「自分」という概念を奪われたアンジャッシュの児嶋さんが「自分は……自分とは……自分と他人……」って混乱して、パワータイプの女子高生宇宙人にボコボコにされるところが好きです。あと、宇宙人の高杉真宙くんも、張りついた笑顔が不穏な地球外生命体っぽさがよく出てて好き。美しい顔の人って、「怖い」と紙一重なんだなと思った。
長谷川博己さんが終盤辺りで演説後に「オーケー、オーケー分かった!」みたいにオーバーアメリカ人っぽい演技になるところが寒いなと思ってたら、映画の撮影話とかを調べてみたらそういう風な演技をするような指示が出ていたらしい。そうなのかい。

また、途中ほとんど一瞬だけ出てくる、東出昌大くんの存在感が半端ない。教会にいる牧師さんで、背が高いから牧師の服がすごく似合う。松田龍平くんがこの牧師から「愛」を奪おうとするんだけど、牧師の考える「愛」が少し哲学的すぎて上手く奪えない、っていう展開がよかった。長谷川博己さんが怪我して右足を引きずって歩くシーンがあるんだけど、その引きずり方が本当にリアルで「え、マジで骨折った?」って思った。「中学生円山」の、草なぎくんの自転車に乗れない演技張りに名演だったので注目して見て欲しい。
終盤、なにもかも諦めた長澤まさみちゃんが松田龍平くんに対して「お願い、私から愛を奪って! もう溢れだしそうなくらいいっぱいなんだよ!」って懇願するシーンが、ものっすごくエロかったです。エロいっていうとちょっと違うかな? すごく色気のあるシーンだなって思いました。実際に奪った後、「愛」という概念のあまりの深さに立てなくなるくらいダメージを受ける松田龍平くんと、「本当に奪ったの? なんてことないんだね……」とあっけらかんとしてる長澤まさみちゃんの対比が好き。映画のビジュアルになっている、崖から景色を眺める二人の、「愛」を知った松田龍平くんの「すごい、今までと全然違うように見える……」って反応と、「愛」を奪われた長澤まさみちゃんの「なんにも変らないわ」ってセリフが、つっらい。

結局、「愛」を知った宇宙人は「え~! 愛とかマジ尊くな~い? 地球滅ぼすのやーめよっと」(割愛)って滅亡させるのやめちゃうんだけど、概念を奪われた人間はそのまんま、多少は回復する人間もいるけれど……、っていう、うっすらバッドエンドかな? 特に生きる上で必要な「愛」を奪われた長澤まさみちゃんはほんともぬけの殻という感じ。なかなか長いので疲れた。

散歩する侵略者

散歩する侵略者