アルパカの右にならえ

邦画と小説をこよなく愛する創作ヲタク。

【邦画ログ】寝ても覚めても「やりおったなー。」「朝子お前は邦画至上最低最悪の女」ネタバレ

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寝ても覚めても [DVD]

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主人公の朝子の暗さが好き。ドライヤーで髪を乾かす東出くんとか、朝子から電話がかかってきてベッドにぼよんて飛び乗りながらスマホ見下ろす東出くんという、性癖がつまりすぎてる映画です。東出くん好きなら絶対見ておくべき映画。入場を締め切った写真展に入る際に嘘をついて謝り倒してなんとか入れてもらおうとするシーンとか、煙草休憩中に非常階段から猫にご飯をあげる朝子を見下ろすシーンとか、細かい見せ方が巧妙で好き。バイバイした後に再度呼び止められて振り返って話してたら信号点滅して慌てて横断歩道渡るシーンとか、自然な流れを撮るのが上手い。電車が止まってることをぼやく現場の人にお礼を言って引き返すシーンや、道端で携帯電話を握りしめて座り込むスーツ姿の女性など、人の優しさを行動で見せるところが好き。

「うん、このカレーやっぱり味染みたな」
「そやな。それラタトゥイユやけどな」
「うん」
と、同じ方向に顔向けて(テレビ観ながら会話する)恋人同士の朝の風景が素晴らしい。なかなか淡々とストーリー進むしあんまり状況説明がないけど、感情はきちんと口に出すのが分かりやすい。

「高速降りたん?」
「大丈夫やで。寝とき」
のシーンも印象的。最高の東出くんやんけ……、キッスキッスキッスキッスからの入籍入籍入籍入籍入籍入籍〜〜のやつ。最高……! と、東出くん好きの私が大興奮です。車の運転に疲れてフローリングにうつ伏せで倒れ込む東出くんの靴下脱がせてあげて足の裏マッサージしてあげる朝子ちゃん可愛すぎて死ぬ。そのままふくらはぎから腰から肩までマッサージしてあげるとこああ〜〜! 亮平のこと好きやで。どうしてええか分からんくらい好きになってしまった……って手を動かす朝子に「お前のそういうとこが俺を頑張らせんねん……」って呟く東出くん……。この前フリにきゅんきゅんしてたら後半あんな展開とか作者鬼だよねって思う。あと、女子3人の会話めっちゃくちゃ可愛すぎて可愛すぎて大好き。
大阪の会社に戻る話が出たという流れから、「一緒にけえへんか? 俺と結婚せえへんか?」って一緒に食器洗いしてる時にさらーっとプロポーズする東出くんがめちゃカッコよすぎてひれ伏した。推し俳優が地元の方言を喋るという最高のご褒美タイムだよ。
寝ても覚めてもの感想でちらほらと「ホラー」という単語を目にしてなぜ?? と不思議だったんだけど、麦と再会するところで実感した(笑)結局朝子の心の底にはずっと麦がいて口では亮平のことが好きだと自分で自分を納得させようと嘘をついて平気な顔をしていた最低女だったんだと、感情が一気にどん底に。麦の手を取って逃げる朝子を睨みつける亮平のあの悔しそうな表情。やっぱり東出くんの怒哀の演技がどツボです。朝子みたいな大人しそうに見える女が一番クソビッチだよねっていう最高の映画でした。

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「朝ちゃんやりおったなー。」人間的にはクズやけどちょっとだけカッコよくもあった。というLINEを送る春代と、お願いだから戻ってきて良平さんに謝って!と電話をかけてきて、朝子に断られたら「二度と連絡はしないで、さよなら」と縁を切るマヤ。同じ友人でも許せる人と許せない人を描くところが好き。特に春代のラインの内容はほんと、自分と他人をがっつり線引きしている人間の態度で、クズと断定しておきながらも友人自身を尊重しているところが良い。

一度裏切っておいて「亮平のところに戻らなくちゃ」と平然と口に出せる都合の良すぎる朝子という1人の人間の神経を心から軽蔑する。ここまで最低で胸糞の悪い女を目の当たりにしたことがない。信じられない。「お前は許されねぇぞ、馬鹿だ」と言いながらもお金を貸してくれる東北のおじさん……。なんなんだよと。この周囲を巻き込んで巻き込んでの朝子の行動には胸くその悪さしかない。家に来た朝子に対して吐き捨てる「猫捨てたで」という亮平のセリフが良い。最初に捨てたのは朝子。その通り。命に責任を持てない人間はクズ。あんなに仲睦まじいシーンを織り交ぜておいてからの亮平からの激しい拒絶のシーンが本気で最高の最高だった……! はじめは麦がホラーかと思っていたのに、終盤まさかの朝子自身がホラーってすごい展開。最後のシーン、二人で川を眺めるシーンの二人の表情が最高。
内見の時はあんなに煌めいて見えた川を、「汚ったない川やで」と吐き捨てる東出くんの目線。地獄みたいな結婚生活の始まりじゃん……………………!! なにこの最高の映画〜〜!! やば死ぬ展開。主人公はくそくそクズ女。
もう一度観たいとも思わない。主人公の破天荒で独りよがりな不思議天然ちゃんキャラの骨頂みたいなキャラクターを思い出すだけで胸糞が悪く苛々する。だけど朝子と亮平のひとときの幸せなシーンから、その幸せを自らの手でぶち壊す最低で最悪な展開が頭から離れない。主人公朝子、邦画界において近年稀に見るレベルの最低クソ女。共感から反感に変わっていく自身の感情がたまらなくエモい。こんなに感情が二転三転する映画は久しぶり。

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