アルパカの右にならえ

邦画と小説をこよなく愛する創作ヲタク。

【洋画ログ】パターソン Paterson【ネタバレ感想】

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パターソン/Paterson

特に何も起こらない。ただの町のバスの運転手が主人公のお話。主人公パターソンは詩を書くのが好き。妻のローラは自由人。ローラはカップケーキを作るのが趣味で、「今度のバザーでカップケーキがたくさん売れたらカップケーキ屋さんやろうかな」とか言ったり、Youtubeを観た影響で「ギターが欲しい! カントリー歌手になろうかな」とか言い出したり、自由奔放で可愛らしい。物凄く美人なのに、キュートでちょっと天然な一面もある感じ。
パターソンは毎日6時10分から30分の間に起きる。だいたい11分くらいだけど、30分に起きてもそんなに慌てないイメージ。朝食はドーナツ型をしたシリアル。おうちのカーテンはローラの手作り。ローラはモノクロが好き。この映画ではブルーがよく出る。家の屋根とか、ポストとか、バスとか。毎朝目が覚めたら腕時計をつけて、隣で眠る愛する人にキスをして、シリアルを食べて家を出て、会社へ行って、運転席でノートに詩をしたためる。同僚の愚痴を聞いて、準備ができたら業務を開始する。毎日同じ時間、同じ道を運転しながら、時おり聞こえてくる乗客の面白かったり面白くなかったり興味深かったり興味なかったり色々な会話を耳にして、たまにクスッと一人で笑ったりする。お昼休みには滝を見ながら、ローラが作ってくれたサンドイッチとかカップケーキでランチの時間。午後の業務が終えたら家に帰って、ローラと一緒に夕食をとったら、愛犬の散歩のついでにバーへ行って、ジョッキ一杯のビールを飲んで家に帰り、ローラと同じベッドで眠る。そういう毎日。月曜日から日曜日までの、さして変わり映えしないルーティーン。ただ起きて仕事して詩を書いてご飯を食べて眠ることの連続なんだけど、なんでかついつい見てしまう。
カップケーキの売り上げが286ドルにもなったから外食して映画を観に行こう! と提案するローラが可愛い。土曜日に夕ご飯は外食してレイトショー、それがどれだけ日常の中にある贅沢なことか! パターソンは基本的に相手を肯定する。詩を見せてくれた小学生の女の子に対しても、自由奔放なローラに対しても、「いいね」「素晴らしい」「名案だ」って、間違っても否定の言葉は吐かない。単純なことかもしれないんだけど、そういうのって実際難しいから、映画の中でくらいそういう否定の言葉は極力聞きたくない。終盤出てきた永瀬正敏さんの右手の薬指と小指にテープが貼ってあってなんでかなって思ったら、実際撮影の時に永瀬さんが怪我してたからそのまま使ったらしい。そういうの面白い。

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