アルパカの右にならえ

邦画と小説をこよなく愛する創作ヲタク。

【邦画ログ】「ちょっと思い出しただけ」

松井大吾がまじめにシンプルに恋愛映画を作ったらこんなエモさの交通渋滞みたいな作品ができるのかって。ネタバレなしの映画の感想を映画を見る前に探していた私「感想が『エモい』ねぇ、ふぅ〜ん」、映画を見終わった直後の私「エモエモのエモや〜〜!!」

ニューヨーク屋敷がいい!とみんな言うので、へぇ〜そうなんだって身構えてみたけれど、いい。確かに良すぎる。コンパを抜けた電柱の影で煙草の火を分けながら、「芸能人と付き合いたいわぁ〜!」とぼやくシーン。LINEを交換して「夏、始まりましたわ……」「うぅわっ…(笑)おつかれさまです…」のやりとりが最高だった。アドリブらしくてより最高。時間で言うとほんの少しの出演なんだけど、私がニューヨーク屋敷さんのファンだったらその少しの時間のために2回は絶対見に行く。それぐらいとにかくめっちゃニューヨーク屋敷がいい役すぎる。

クリープハイプ尾崎世界観が思ったより尾崎世界観伊藤沙莉が演じる葉みたいな女の子ってほんといるいる。どこにでもいるなんでもないような子なのに、初対面からノリが良くて人付き合いもそこそこ、タクシー運転手だから人との会話に慣れているっていう職業柄でもあるのかな。
松井大吾の映画はだいたい「この俳優さんちょっと好きだなー」って人が一人二人はいるんだけど、実際観終わるとまったく身構えてなかった別の役者さんに落ちて帰ってくること多し。

ずっと同じ日の数年分、その日は誕生日だからケーキの登場回数が多い。一緒に食べられなかった激励のケーキ。深夜映画を見ながらふたりでつついたひとつのケーキ。バー「とまり木」のマスターたちが作る生クリームびたびたのケーキ。
地獄の合コン会場。忍び込んだ水族館でふたりきりのナイトオンザプラネット。夜にしがみついて朝で溶かしたタイトルバック。綺麗な色のあの朝焼けは「くれなずめ」と繋がっているみたいだった。松井大吾監督は相変わらず、どうして私があんな風に思って、あんな風に泣いたことを知ってるんだろう。誰にも話したことがないのに。という気持ちにさせてくれる。

苺のショートケーキが絶対食べたくなる、明日食べる。