アルパカの右にならえ

生ビールでも発泡酒でも幸せなアラサー。邦画と小説をこよなく愛する創作ヲタク。

ワンルームマンション

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昨晩泊まった彼は朝早くに自分の家に帰ってしまった。玄関先で見送ってから、少し考えて再びベッドにもぐりこんだ。ぬるいぬくもりに包まれながらスマートフォンを開き、至ってどうでもいい日常を反芻する。まったく何の予定もない日曜日を目の前に、そろそろ飽きてくるかもしれない携帯ゲームのアプリを開こうとして、やっぱりやめた。三十分ほどそうして過ごして、とりあえず身を起こして、ベッドから出て、とりあえず布団を綺麗になおす。いつものマレーグマのぬいぐるみを二つ、親子のように寄り添って並べる。トイレを済ませてから、歯を磨きに洗面所に向かう。昨日たらふく食べた手作り餃子のにんにくの匂いが口の中に残っていて気持ちが悪い。歯磨きを終えると顔を洗って、タオルで口を拭う。朝食の準備に取り掛かる。冷凍庫の豚肉を冷蔵庫に移してから、昨日使わずに残ったキャベツの千切りをコールスローにすることにした。小さじ一の塩を振りかけて五分待ち、水けを絞る。伸びた爪が皮膚に食い込んで痛い。使い切りパックのベーコン半分を細かく刻んでキャベツに加え、大さじ一の酢と砂糖と適当なマヨネーズを入れて混ぜる。仕上げに塩コショウを軽くしたら、少し味が濃くなってしまった。小皿に移し冷蔵庫に入れる。トーストを焼いて、その上に、カリカリのベーコンと卵とチーズを混ぜて焼いたものをのせてブラックペッパーを挽いた。インスタントコーヒーに低脂肪乳を混ぜたカフェオレとともに食べる。昨日やっていたフィギュアスケートのエキシビジョンの話題ばかりで、BS放送に変えるも面白そうな番組がなく、結局電源を消す。トーストは美味しくて、しばらく一心不乱でかぶりついていた。カフェオレは半分残った。後で飲もうとテーブルに残しておく。パジャマ姿のまま、昨日購入した紙製のブックホルダーを組み立てる。金具をはめる際に爪が欠ける。中に入れるファイルを整理しだすと止まらなくなり、本棚にとりとめなくある雑誌を引っ張り出し始める。ブックホルダーは安価の割に丈夫で使いやすく、これならもう二つほど買っておけば良かったと後悔した。パソコンデスクの整理も済ませるとすっかりお昼ご飯の時間で、だけど中途半端な時間に食べた朝食のせいでお腹の減る様子はなく、そのままの勢いでキッチンの整理も始めた。何年も前のスターバックスで購入したフラペチーノ用のタンブラーがほこりをかぶっていて、せっかくなので洗剤で洗いぴかぴかにする。だけどこれを使う予定がない。オークションではいくらで売れるだろうかと考えた。キッチンの整理も終わるといよいよやることがなくなり、仕方がないのでベッドの上に寝転がり携帯ゲームのアプリでレベル上げを行う。惰性の時間が一時間ほど過ぎ、程よくお腹が空いてきた午後二時半、遅すぎる昼食をとることにする。最近はちゃんと料理をしなくちゃいけないと思うようになった。だけど先ほど片づけたキッチンを汚したくなくて、仕方なくカップラーメンの封を開ける。電気ケトルでお湯を沸かして注ぎ、三分待つ。冷蔵庫から、朝作っておいたコールスローを取り出す。はちみつ梅も一粒出す。出来上がったカップラーメンとコールスローとはちみつ梅の昼食の時間は十分ほどで終わり、また一つシンクに食器が増えた。冷蔵庫で冷やしておいたポッキーの箱を取り出し、ふた袋ある分の一袋だけを取ってあとは戻す。ベッドの上に寝転がり、金曜日に図書館で借りた島本理生の「七緒のために」を読み始める。表題作ではないもう一つの短編の方が評判が良いらしい。だけど一つ目の短編を読み終えた頃には集中力が切れたしまったので、諦めて栞を挟み本を閉じる。夕方になりカーテンを閉め、夕食の準備に取り掛かる。残ったカフェオレは結局飲まず、流しに捨てた。古いじゃがいもがまだ痛んでなかったので、皮をむいて薄切りにする。残った半分のベーコンを細かく切り、熱したオリーブオイルに鷹の爪を加えて炒める。じゃがいもは余熱で火が通る、と誰に教えてもらったか忘れた知識を思い出し、ほどほどのところで火を止める。耐熱皿に移すと、蓋をしてレンジの上に置いた。スマートフォンのアプリでレシピを見ながら、解凍しておいたステーキ用の豚肉を冷蔵庫から取り出す。玉ねぎをすりおろし、大さじ一の醤油とごま油と砂糖と酢と、少しの塩を混ぜる。玉ねぎをすり下ろしたせいで涙が出てきて、たまらなくなって洗面所に駆け込む。赤い目をして涙をひとすじ流すすっぴんの自分の表情に少し笑う。顔を洗うとスッキリした。漬け込み時間はニ十分。キッチンタイマーをセットして、冷蔵庫の中から、バレンタインに自分用に購入したデメルの猫ラベルのチョコレートを一枚、大切に取り出して口にくわえた。唇の熱で溶けだす苦みを舌の上に感じながら、パソコンの電源を入れる。
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