アルパカの右にならえ

生ビールでも発泡酒でも幸せなアラサー。邦画と小説をこよなく愛する創作ヲタク。

【邦画ログ】サバイバルファミリー/「必需品。カツラ、自転車、つけまつげ」ネタバレあり感想

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「サバイバルファミリー」
この映画は、「ある日突然、日本から電気が消えた──。」から始まり、「なぜ?」ではなく、「理由は知らん、だが生きる! じゃあそしたらどうする? とりあえず飲み水と食糧確保して、安全だと思う場所に家族全員でゴー!」というお話である。

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(「こんな時につけまつげいるか?!」と怒られ、キレて無言で父のヅラを指差す娘。「おめーのカツラはどうなんだよ!?」と、口には出さない優しさに泣いた)

「そんなことも分かんないのか!」「なに考えてんだよ!」が口癖の、口だけは達者で偉そうで頼りにならないたるんだ身体のダメ親父を演じるのが小日向文代さん。魚一匹丸ごとなんてさばけない、美人だけど天然ボケのちょっと抜けた母親を演じるのは深津絵里さん。つけまつげバッサバサで父に面と向かって「ウザッ」と言ってのける、クラスの友達グループにはさほど友情を感じず、夜な夜な繰り広げられるライン合戦はひたすらウザい、思いきり今どきの女子高生を演じるのが葵わかなさん。常にヘッドホンをつけて無口、大学でもそれほどはっちゃけてない、講義の板書をスマホ写真で済ます、こちらもTHE・今どきの男子大学生を演じるのが泉澤祐希くん。

電車が止まっていたとしても徒歩で、停電のせいで会社の入り口のセキュリティーが停止してもガラスを突き破ってまで会社に行こうとする父。もうほんと、とりあえず会社行かなくちゃっていう、日本人の社畜精神がずばずばに描かれててほんと笑う。でももし、自分がこの状況に陥ってもまず会社に行くかもしれないって思ったよ。この時の父の感じから、経理部の上の方の役職なのかなぁと想像する。態度だけは偉そうな中途半端な役職止まりというイメージ、私が過去に働いてた会社でもいたいた……と、ここで少しイヤな気持ちが蘇る。
食料が心配でとりあえずスーパーに買い物に行く母。スマホの電池がゼロになっても友達の顔を見るために学校へ行く娘と息子。

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(まさかあの鈴木家族が一致団結して豚を捕まえるとは)

全ての電気を使用するもの電子機器がストップという状況から、クレジットカードが使えない、ATMで現金が下ろせない、スーパーに物資が届かない、車が使えない、等々。東日本大震災の時も、帰宅難民の人たちがこぞって自転車を買って帰路についたというニュースも記憶に新しい。「羽田までどうやって行くの?」という娘に「自転車だ! 環八を真っ直ぐだ!」って叫ぶ父に笑った。水を高値で売る商店、物々交換で米を渡す米屋、一番すごい、と驚いたのは、2キロある真っ暗なトンネルの中を先導することで食料(お金?)を稼ぐ盲目の老人たちのシーン一家は「トンネルでしょ? まっすぐじゃん」と真っ暗なトンネル内に自転車で進もうとするが、中で自動車が停車していたり、地面でタヌキが死んでいたり、ただまっすぐ進むだけでは出口まで辿り着けない。その点、目の見えない方たちは日々白杖を頼りにまっすぐでない道を進んでいる、暗闇のプロに先導してもらえればトンネル内も安心。というシーン。こんなエピソードが思いつくこと、あります? すごいな。

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(見よ、この生存レベルの高そうなスーパー家族を)

災害時に大事なのはカツラでもつけまつげでもスマホでもなく自転車なんだなと強く実感しました。
ほぼオールロケらしいこの映画、東名高速を貸し切って自転車で突っ切るシーンは本当に爽快です。また、そこで出会う時任三郎率いる「災害があっても自活力の高い、むしろこの状況を楽しむスーパー家族」との対比も良かった。
一番面白かったのは須磨水族館の炊き出しのシーン。外で魚などの魚介類を焼いて食べてる集まりを発見して、え、なんで? と思っていたら、水族館の水槽で泳いでいる魚をとっ捕まえてガンガンに食ってる。蟹とか海老とか味噌汁にしてんの。こんなん声出して笑うしかない。並んでもギリギリ料理が足りずに終わってしまい、「せめてこの子たちの分だけでも!」って土下座する父と、泣く父を抱き起こして支える家族のシーンにグッときました。

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(目玉焼きと豚の燻製肉が美味しそう)

また、岡山で豚を追いかけ回すシーンも最高。豚と一緒に土手から転がり落ちて死んだかと思いきや、豚を仕留めて得意気な父の顔…お父さん……。養豚場の家にお世話になって、きゅうりの漬物と目玉焼きをおかずに白ご飯を掻き込む演技が凄かった。役者さんって本当にすごいんだなって圧倒されました。泣きながらご飯を食べる娘の表情も素敵。ここ泣いた。

川を渡るシーンが11月に撮影されたと聞いて絶句。見てるだけでも息苦しくなりそうなくらい過酷なシーンが冬に撮影されたなんて、なんという地獄…コヒさんしんじゃう…!! 川に流された父を追うも見つからず、岸で待つ母と娘に、外れたカツラの毛を差し出す息子。父の唯一の形見。それを見て泣き崩れる親子の図が可笑しすぎてつらかったです。マンションの隣の家族が泣く泣く飼い犬を置いて家を出るシーンからの、道中見かけたどこかから逃げてきた飼い犬に情けを見せる娘がよかった。ペットボトルの水を盗まれ追いかけるも、追いかけた先で犯人がその水で妻と共に乳児にミルクを飲ませていることを知ると、なにも言わず戻る息子もよかった。蒸気機関車の拾われる直前、母と娘の手を取って前を進む息子を見て「大きくなったな……」と感動。