アルパカの右にならえ

邦画と小説をこよなく愛する創作ヲタク。

【漫画ログ】「ロッタレイン」


中途半端に眠ってしまって目が覚めて寝付けずネットを眺めていたら、Kindle50%還元セールをやっていたので「バーナード嬢曰く。」1〜5巻を一気買いしてダウンロードしてる。Kindle久しぶりに引っ張り出した。

「ロッタレイン」は電子で読んで衝撃を受けて、紙でも全巻買った。紙も良い……。定期的にこの漫画によって胸をぐちゃぐちゃに引き裂かれたくて読み返す。登場人物全員の気持ちがちゃんと自然に理解できて、だからなお辛い。この漫画の結末はどうあれ、救いようのないストーリーは昔より手に取りづらくなってきた。前に買った「マイ・ブロークン・マリコ」もすごくよかった。鬱映画ってすごく苦手なんだけど、「ミリオンダラー・ベイビー」は家族で観て(最悪)、もう二度と観たくない、見る勇気も気力も絶対にないんだけど名作だと思った。だけどもう二度と観たくない。たぶんいま、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」とか「縞模様のパジャマの少年」とか観たらしぬと思う。そういえば「ミスト」も観たな、父と。なんで家族で観るんだよ。

【漫画ログ】「女の園の星」


「夢中さ、きみに。」で和山やまに堕ちた人は買うべき、「女の園の星」

ポロシャツアンバサダーで電車内で吹きそうになって俯いて、「じゃあ星先生が教室に入ってきたらバズーカ撃つのはどうかな?」で、死ぬかと思いました。酔った星先生の破壊力、女生徒の低血圧っぷりがことごとくツボで、この世界に住みたいと思う。

そもそもの星先生のビジュアルがやばいんだよね。これは吉沢亮なんだよ絶対……。

【邦画ログ】「ちょっと思い出しただけ」

松井大吾がまじめにシンプルに恋愛映画を作ったらこんなエモさの交通渋滞みたいな作品ができるのかって。ネタバレなしの映画の感想を映画を見る前に探していた私「感想が『エモい』ねぇ、ふぅ〜ん」、映画を見終わった直後の私「エモエモのエモや〜〜!!」

ニューヨーク屋敷がいい!とみんな言うので、へぇ〜そうなんだって身構えてみたけれど、いい。確かに良すぎる。コンパを抜けた電柱の影で煙草の火を分けながら、「芸能人と付き合いたいわぁ〜!」とぼやくシーン。LINEを交換して「夏、始まりましたわ……」「うぅわっ…(笑)おつかれさまです…」のやりとりが最高だった。アドリブらしくてより最高。時間で言うとほんの少しの出演なんだけど、私がニューヨーク屋敷さんのファンだったらその少しの時間のために2回は絶対見に行く。それぐらいとにかくめっちゃニューヨーク屋敷がいい役すぎる。

クリープハイプ尾崎世界観が思ったより尾崎世界観伊藤沙莉が演じる葉みたいな女の子ってほんといるいる。どこにでもいるなんでもないような子なのに、初対面からノリが良くて人付き合いもそこそこ、タクシー運転手だから人との会話に慣れているっていう職業柄でもあるのかな。
松井大吾の映画はだいたい「この俳優さんちょっと好きだなー」って人が一人二人はいるんだけど、実際観終わるとまったく身構えてなかった別の役者さんに落ちて帰ってくること多し。

ずっと同じ日の数年分、その日は誕生日だからケーキの登場回数が多い。一緒に食べられなかった激励のケーキ。深夜映画を見ながらふたりでつついたひとつのケーキ。バー「とまり木」のマスターたちが作る生クリームびたびたのケーキ。
地獄の合コン会場。忍び込んだ水族館でふたりきりのナイトオンザプラネット。夜にしがみついて朝で溶かしたタイトルバック。綺麗な色のあの朝焼けは「くれなずめ」と繋がっているみたいだった。松井大吾監督は相変わらず、どうして私があんな風に思って、あんな風に泣いたことを知ってるんだろう。誰にも話したことがないのに。という気持ちにさせてくれる。

苺のショートケーキが絶対食べたくなる、明日食べる。

【邦画ログ】「ハケンアニメ!」

ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

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映画「ハケンアニメ!」
なにかしらの創作物に関わる人にはぜったい刺さる。直接生み出さない人にも刺さる、王道のお仕事ムービー。あまり人が入っている印象はないけど、観た人の感想は軒並みアツくて気になって、仕事終わりに思いつきで観てきた。

最初のワンカット長回しから大好きな予感がしてた。
吉岡里帆ちゃんの、口下手でオタクっぽい一息で喋り倒す演技や、人前で喋り慣れてないおどおどした話し方が最高。若くて可愛い主人公が監督に抜擢されたことに対して、周囲からの「どうせ代打」「次はない」というプレッシャーがあって、容姿を全面的に出すことでアニメの認知度を広めていくチーフプロデューサーのやり方に最初は反発するんだけど、擁護するようで士気を下げる周囲の仲間からの「可哀想」「食いつぶされないようにね」という助言に対して、「あの人の悪口を言っていいのは、私だけです。一番振り回されてるのも私だし、その逆に一番迷惑をかけているのも私です。だけど、その私が信頼しているんだから。全然可哀想じゃない!」と感情をぶちかますシーンがすごくよかった。本人なりに飲み込んでいることに対して、周囲がいつまでも「可哀想」という呪いをかけるのって大嫌い。
「息抜きなんて死んでもできない。書くことの壁は書くことでしか超えられない。どれだけ飽きても、嫌でも、派手さがなくても、地道に机に向かうことでしか進まないんだよ」と、ゼロから命を生み出す苦悩を吐露す、過去にカリスマと言われこちらもプレッシャーに潰されそうな王子監督のシーンもよかった。

柄本佑さん演じるチーフプロデューサーの行城さんは、嫌いな人いるわけないじゃん、100人が100人好きに決まってるじゃん! という役柄だった。「あなたは代打ではありません。最初から4番です」ってセリフに痺れた。あとは、夕方5時放送アニメの最終回で「主人公殺しちゃダメ?」と提案する王子監督に対してチーフプロデューサー有科の言った、「殺していいですよ。皆殺しにしてください。私に局と戦えるだけの武器(納得させられる最終回の絵コンテ)をください」というセリフも好き。
この自由奔放で才能に満ち溢れた王子監督と、それに振り回されつつも上手く操縦する有科の仕事上の確固たる信頼関係・相棒っぽさがよかっただけに、ラストの「結婚してあげてもいいけど」には冷めたなぁ。たぶん、原作ではきちんと心情も細かく描かれてて伏線もちゃんとあるんだろうけど。原作を読んでいたら受け取り方も変わっていたはず。

「この世の中は繊細さのないところだよ。だけど、それでもごくたまに、君を助けてくれたり、わかってくれる人はいる。わかってくれてる気がするものを、観ることもある」というセリフもよかった。世界に自分一人ぼっちかもしれないという夜があって、そういう時に、こういう世界もあるかもしれない、と誰かに言われるのはかけがえのない救いだと思う。ラスト、ベランダから外を見下ろし、友達とかけていく太陽くんを眺める主人公の涙と、顔を上げて部屋に戻るそれだけのシーンがラストカットなのは本当に爽やかで、私の大好きな大好きな邦画だった。
ジェニーハイのエンディング曲がよすぎて帰り道で速攻買う。エンドロール後の数秒の映像も憎い。かなりレベルの高い邦画なだけに、上映期間の短さが残念。この映画には行城さんのようなプロデューサーがついていなかったんだな。

【邦画ログ】「くれなずめ」

松井大吾監督の「くれなずめ」を観ました。
この映画で藤原季節さんという俳優を知りました。何回忌かの帰りの、雪の日の駅のシーンがめちゃくちゃよかったです。落ちた。「お菓子貰いに来たわけじゃないのに、お菓子貰いに来たみたいになっちゃって」のシーンの涙は、きっとネジには見えていないんだろうな。寂しさを共有したくて、だけど言葉が見つからないから他愛もない言葉を放ってしまう、こうして一つのシーンにされるとぎゅーっときてしまう。松井大吾の脚本は、誰にも言っていないはずのこの気持ちをどうしてこの人は知っているんだろうか、と思う。そういうセリフを書く人。
胴上げして召させようとするシーン、暮れなずんでる五人の間から斜めににょきっと出てきて挟まるよしお、三人で眠る前に話す「好きな人できた?」の夜、おでんの屋台でぎゅっとなった二人とか、すべてのシーンのパワーがとてつもない。ウルフルズの「それが答えだ」が大好きで(この曲のイントロは最高)、余興のダンスシーンはかなりグッときた。アウトロでジャニーズみたいにスン…ッてしたラスト締めるのやめろ(笑)と笑いました。心臓のシーンが始まったら「さっきまでの涙返せよ」とスッとなりましたが、それも含めてすべてが素晴らしかった。タイトルバックも、ずるすぎる。

男子版の「くれなずめ」、女子版の「私たちのハァハァ」だな! と思う。「くれなずめ」もう一度見たいんだけど、そろそろ上映が終わりそうで上映が朝早くしかなくてどうしよう。

【邦画ログ】「空白」

邦画「空白」を観ました。
常に誰かが怒っていて、誰かが謝っている映画だった。間違いなくここ最近の邦画の中でナンバーワンだと思う。そんなに数観ていないけれど。
冒頭の車の事故のシーンが、もう映画史に残る悪趣味さ・残忍なえげつなさだと思う。描写としては、ダイレクトにグロいのではなく、想像力に殺されるタイプ。この冒頭のシーンのためだけに観てよかったと思う。それだけでPG12に納得。こんなに悪趣味なタイトルバックを私は知らない。なにを見てどう生きてきたらここまで最悪なオープニングが撮れるのだろうとゾッとした。タイトルの赤が忘れられない。パンフレットの表紙と裏表紙の景色に気づいた時もう一度ゾッとした。
事故の加害者の親と被害者の父親が対峙する葬儀のシーンではグチャグチャに泣いた。圧巻だった。母親のあの言葉を聞いて打ちのめされてしまった。藤原季節はすっごいすっごいいい役で最高だった、ほんと。マスコミの人間を追い払うところでグッときた。描いた絵の感想を話すシーンも好き。なんかもうドッと疲れすぎて、映画館の帰りのエレベーターで乗り合わせた同じ映画を観た人たち、無言。